ヤンググランプリ2021 出場選手を深堀り!
競輪界年末の大一番『KEIRINグランプリ2021(GP)』の前日、12月29日(水)に若手選手ナンバーワンを決める大会『ヤンググランプリ2021(G2)』が開催される。
出場資格はデビューから3年以内(実質2年半以内)の男子選手のみで、今年でいうと115期、117期、119期が該当する。その中から平均競走得点上位者が選ばれるため、今年デビューの選手が出場するのは難しい。よって出場のチャンスは実質2回。この数少ない権利を勝ち取ったのは以下の選手たちである。
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《ヤンググランプリ2021出場予定選手》※平均競走得点上位順
〈正選手〉
○山口 拳矢(ヤマグチ ケンヤ) S2・岐阜・117期 初出場
○寺崎 浩平(テラサキ コウヘイ) S1・福井・117期 初出場
○高橋 晋也(タカハシ シンヤ) S1・福島・115期 2回目
○町田 太我(マチダ タイガ) S2・広島・117期 初出場
○佐々木 悠葵(ササキ ユウキ) S2・群馬・115期 初出場
○石原 颯(イシハラ ハヤテ) S2・香川・117期 初出場
○坂井 洋(サカイ ヨウ) S1・栃木・115期 2回目
○小原 佑太(オバラ ユウタ) S1・青森・115期 2回目
○伊藤 颯馬(イトウ ソウマ) S2・沖縄・115期 初出場
〈補欠選手〉
●菊池 岳仁(キクチ タケト) S2・長野・117期
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各選手の略歴を順に紹介していこう。
山口拳矢選手(S2・岐阜・117期・初出場)
ヤンググランプリ開催時は25歳。岐阜支部所属(中部地区)。ホームバンクは大垣競輪場。
祖父の山口啓氏は元競輪選手(7期)、父の山口幸二氏も元競輪選手(62期)でG1タイトルホルダー。父の弟で叔父の山口富生も現役競輪選手(68期)でG1タイトルホルダー。拳矢の師匠でもある。兄の山口聖矢も現役競輪選手(115期)という、競輪一家に生まれ育った。
中学、高校はサッカー部に所属しており、大学へ進学したが競輪選手を目指すべく中退。日本競輪学校(以下、競輪学校)へ113期生として入学する。しかし遅刻をくり返すなどの生活態度が問題視されて、退学処分に。その後、猛省し、117期生として日本競輪選手養成所(以下、養成所)へ復学を果たした。
卒業記念レースは決勝4着。在所成績は2位。在所中はゴールデンキャップを1回獲得している。昨年5月29日、小倉競輪場でデビューし、完全優勝。『競輪ルーキーシリーズ2020』で全勝して本格デビュー。同年8月22日、A級2班へ特別昇班。9月25日、S級2班へ特別昇級。11月19日の福井開催で28年ぶりにバンクレコードを更新した。
今年3月14日、地元の大垣競輪場で行われた『ルーキーチャンピオンレース』で優勝。同じ月の25日に『ウィナーズカップ(G2)』で特別競輪に初出場を果たすと、7月18日の『サマーナイトフェスティバル(G2)』では特別競輪で初めての決勝に進出し、準優勝となった。
そして9月の『共同通信社杯(G2)』。予選で地元大垣のバンクレコードタイ記録を出すなどの活躍の末、G2初優勝。デビューから1年114日は史上最速である。これらの活躍もあり、史上最速でのGP正選手選抜が期待されたが、11月の『競輪祭(G1)』にて落車での途中欠場の影響もあり、補欠選手までであった。12月24日(金)の17時時点で正選手に欠場があればGP出場、なければヤンググランプリ出場となる。
出場となれば優勝候補筆頭は間違いない。得意の捲り一閃でヤングの「HERO」となることが期待されている。
寺崎浩平選手(S1・福井・117期・初出場)
ヤンググランプリ開催時は27歳。福井支部所属(近畿地区)。ホームバンクは福井競輪場。
実家は自転車店で、福井県立科学技術高等学校在学中に自転車競技を始める。ちなみに脇本雄太選手は高校の先輩である。大学でも自転車競技を続け、数々のタイトルを獲得。2019年5月に117期生として養成所に入った。
この年より所定の基準をクリアした優秀な生徒は早期卒業できる制度が導入され、それによって同年12月に菊池岳仁選手と共に卒業。翌2020年1月16日の和歌山開催でデビューした。同年2月7日、A級2班へ特別昇班。3月26日、S級2班へ特別昇級。デビューから無敗の18連勝でS級への昇級を果たしたのは深谷知広選手に続いて史上2人目の快挙であった。
同年7月10日から開催の『サマーナイトフェスティバル(G2)』で、史上最速となるデビューから177日で特別競輪に初出場。8月12日からの『オールスター競輪(G1)』ではG1初出場、初勝利を成し遂げている。
今年7月1日より117期では一番乗りとなるS級1班へ昇班。8月28日には112期生の内村舞織選手と入籍した。
自転車トラック競技ナショナルチームでパリ五輪を目指すメンバーでもある寺崎浩平選手。公私ともに充実した日々を送ってきた今年最後のビッグレースにて、脇本先輩のお株を奪う徹底先行での栄冠を勝ち取り、ヤングの「HERO」を目指す。
高橋晋也選手(S1・福島・115期・2回目)
ヤンググランプリ開催時は27歳。福島支部所属(北日本地区)。ホームバンクはいわき平競輪場。
北海道出身で中学、高校とスピードスケートをやっていたが、高校卒業後に競輪選手を目指すべく、福島へ移住。アマチュア時代を経て、4年間浪人した末に競輪学校へ115期生として入学。在所成績14位で卒業した。
デビューは2019年7月5日にいわき平だったが、決勝は3着に敗れた。それでも同年8月19日にA級2班へ特別昇班。10月13日にS級2班へ特別昇級を果たしている。昨年3月の『ルーキーチャンピオンレース』で準優勝。同月の『ウィナーズカップ(G2)』で特別競走に初出場し、その後はG1、G2の常連に。今年の1月1日からS級1班へ昇班。3月の『ウィナーズカップ(G2)』では決勝進出も果たしている。
競輪学校時代にハイパフォーマンスディビジョン(HPD)に選出されて、自転車競技ナショナルチームと共に練習。卒業後は強化指定選手となったが、残念ながら離脱となってしまった。その悔しさをバネに鍛え上げたからこその、今年の活躍。昨年は4着だった鬱憤を晴らすべく、得意の捲り脚でヤングの「HERO」へと駆け上がる。
町田太我選手(S2・広島・117期・初出場)
ヤンググランプリ開催時は21歳。広島支部所属(中国地区)。ホームバンクは広島競輪場。
中学では野球をやっていたが、高校で自転車競技を始めるとインターハイや国体で好成績を収める逸材に。117期生として養成所に入所。史上初めてすべての記録会でゴールデンキャップを獲得した。在所成績は11位。
デビューは昨年5月15日の広島で、完全優勝。同年8月14日にA級2班へ特別昇班し、11月12日にはS級2班へ特別昇級。今年6月の松山開催G3で初優勝し、117期では初めての記念制覇を果たす。7月16日からの『サマーナイトフェスティバル(G2)』で特別競走初出場、初勝利。8月10日からの『オールスター(G1)』]初出場、初勝利。11月の『競輪祭(G1)』にも出場している。
徹底先行が魅力の選手。同型若手選手にも負けじと逃げ切って、ヤングの「HERO」となれるか。
佐々木悠葵選手(S2・群馬・115期・初出場)
ヤンググランプリ開催時は26歳。群馬支部所属(関東地区)。ホームバンクは前橋競輪場。
中学、高校、大学をバスケットボールをやっていたが、白鵬大学バスケットボール部の先輩だった山岸佳太選手(107期)の影響もあり、115期生として競輪学校へ入学した。在所成績は6位。卒業記念レースは準優勝だった。
2019年7月12日に大宮でデビューし、1着、3着、1着で優勝。同年12月4日にA級2班へ特別昇班。S級2班への特別昇級はそれから約1年後の2020年11月27日になってしまったが、今年に入ってからは明らかに一皮剥けた強い走りを見せるようになり、7月の『サマーナイトフェスティバル(G2)』で初の特別競走出場。8月の『オールスター(G1)』では初日失格となってしまったが、11月の『競輪祭(G1)』ではG1初勝利を上げている。
早めの仕掛けが魅力の、どちらかというと先行逃げ切りタイプ。しかし番手でも良い仕事ができる自在型。好機に飛び出し、ヤングの「HERO」という栄冠を勝ち取れるか。
石原颯選手(S2・香川・117期・初出場)
ヤンググランプリ開催時は22歳。香川支部所属(四国地区)。ホームバンクは高松競輪場。
中学、高校と陸上競技をやっていたが、2016年に立川競輪場で行われた年末のGP。逃げる稲垣裕之選手の番手で構え、カマしてきた平原選手に合わせて外に出し、直線の競り合いを制して優勝した村上義弘選手の姿に感動して競輪選手を目指す。117期生として養成所に入所。在所成績は28位。デビューは昨年5月15日の広島で、準優勝だった。
同年9月、A級2班への特別昇班。今年1月12日にS級2班へ特別昇級となる。特別競走初出場は今年8月の『オールスター(G1)』。G1初勝利も上げている。今年は他にも『共同通信社杯(G2)』、『寛仁寛仁親王牌(G1)』にも出場。『競輪祭(G1)』では再びG1で勝利し、四国勢を引っ張る機動型として活躍している。
仲の良い町田太我選手と瀬戸内ラインで回って番手発進。得意の捲りが決まればヤングの「HERO」への道も見えてくる。
坂井洋選手(S1・栃木・115期・2回目)
ヤンググランプリ開催時は27歳。栃木支部所属(関東地区)。ホームバンクは宇都宮競輪場。
中学はソフトテニス部。高校で自転車競技を始め、日本大学自転車競技部へと進む。大学時代はインカレスプリント優勝など、輝かしい成績を残した。
115期生として競輪学校へ入学。ゴールデンキャップを獲得し、在所成績は1位。卒業記念レースは決勝で8着となってしまったが、栃木支部のエース候補として期待されてのデビューとなった。噂に違わぬ走りで、2019年7月4日取手開催でのデビュー戦は完全優勝。同年8月12日にA級2班へ特別昇班。10月27日にS級2班へ特別昇級。今年1月1日からはS級1班として活躍している。
昨年3月の『ウィナーズカップ(G2)』で特別競走初出場で初勝利。同年8月の『オールスター(G1)』でG1初出場、初勝利を上げ、以降は特別競走の常連となっている。
競輪学校時代にHPDに選抜された身としてはナショナルチームに対する対抗心は少なからずあるだろう。昨年に続き、2回目の出場。5着だった悔しさを晴らすべく、得意の捲りでヤングの「HERO」という頂きを目指す。
小原佑太選手(S1・青森・115期・2回目)
ヤンググランプリ開催時は25歳。青森支部所属(北日本地区)。ホームバンク(練習地)は八戸自転車競技場。
中学時代は陸上競技の選手だったが、高校、大学と自転車競技にのめり込む。朝日大学自転車競技部では国体スプリントで優勝するなどの優秀な成績を残し、115期生として競輪学校へ入学。在所成績は7位で卒業記念レースは決勝3着。2019年7月6日に伊東でデビューし、準優勝だった。
同年9月24日、A級2班へ特別昇班。12月にS級2班へと特別昇級を果たしたが、そこから時間が空いて、今年7月1日よりS級1班になる。今年3月の『ウィナーズカップ(G2)』で特別競走に初出場し、7月の『サマーナイトフェスティバル(G2)』、9月の『共同通信社杯(G2)』にも出場したが、G1出場はまだない。
それでも競輪学校時代はHPDに選出され、現在は自転車トラック競技ナショナルチームに所属する、将来有望な選手。パリ五輪を目指し、鍛え抜いている脚で昨年7着の悔しさを晴らすべく、捲りでヤングの「HERO」をもぎ取る。
伊藤颯馬選手(S2・沖縄・115期・初出場)
ヤンググランプリ開催時は22歳。鹿児島支部所属(沖縄県・九州地区)。ホームバンクはなし。
中学では水泳をやっていたが、高校で自転車競技の道へ。115期として競輪学校に入学した。在所成績は21位。卒業記念レースは決勝で5着。2019年7月5日に武雄でデビューするが、勝利なしの決勝3着。その後は奮起し、同年8月31日にA級2班へ特別昇班するも、S級2班への特別昇級は昨年5月17日までかかってしまった。
特別競走初出場は今年3月の『ウィナーズカップ(G2)』。今年9月の『共同通信社杯(G2)』にも出場したが、初勝利はまだない。このメンバーの中では苦労人。「今年が最後なので出たい」という希望を叶えて、ギリギリ正選手に滑り込んだ。
同期で友人だという佐々木悠葵選手に負けず劣らず、自在脚でヤングの「HERO」となり下剋上を果たすことができるだろうか。
以上が正選手9名だが、山口拳矢選手がGP出場となった場合にくり上げ出場となる補欠選手も紹介しておこう。
菊池岳仁選手(S2・長野・117期)
ヤンググランプリ開催時は21歳。新潟支部所属(長野県・関東地区)。ホームバンク(練習地)は松本美鈴湖自転車競技場]。
中学は陸上とスケート、高校は自転車とスケートという二刀流だったが、自転車競技に絞り、117期生として養成所へ入所。寺崎浩平選手と共に早期卒業を果たす。
昨年1月19日に岐阜でデビューし、完全優勝。同年2月10日にA級2班へ特別昇班するも、S級への特別昇級は果たせず。今年1月1日からS級2班へと昇級した。特別競走初出場は今年8月の『オールスター(G1)』。今年は『寛仁寛仁親王牌(G1)』や『競輪祭(G1)』にも出場している。
一緒にデビューした寺崎選手には後れを取ってしまったが、ナショナルチームで練習に励む日々。いずれは競輪界のトップ選手として活躍するだろう。今年のヤンググランプリへの出場が叶わなくても、まだ来年がある。今後のさらなる飛躍に期待したい。
以上、正選手9名と補欠選手1名を見ていただければおわかりの通り、近年稀に見る強豪揃いで激戦が予想される。自力一本で勝ちきるのはかなり難しいメンバーだ。巧みな立ち回りがくり広げられるといった、“競輪”としての魅力あふれるレースが期待される。実に楽しみな『ヤンググランプリ2021』である。
「ヤンググランプリ2021」を楽しむならWINTICKET
WINTICKETの制作・運営する「KEIRIN GRAND PRIX 2021」 公式特設サイトにて、「ヤンググランプリ2021(G2)」に出場する選手に関する情報や映像コンテンツ、インタビューなど順次公開予定です。
- ウィンチケット編集部
- WINTICKET(ウィンチケット)のコンテンツ編集チーム。初心者でも0からわかる記事を150本以上執筆した他、グレードレースを中心とした「WINTICKETニュース」、ABEMA 競輪・オートレースチャンネルでの番組の見どころをまとめたレポート記事の執筆を担当。
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