競輪コラム

WINTICKET EXデータ解説「ちぎり」 編

日常ではあまり使われない言葉が、競輪ではよく使われています。そのひとつに「ちぎる」という言葉があります。今回はこの「ちぎる」について説明します。

「ちぎり」とは

例えばこのような3分戦の並びで400バンクを周回していたとします。

9車立て並び

展開を予想するときにまずラインの先頭にいる選手のタイプを過去のレースやデータから、「先行」なのか「捲り」なのか、「先行」ならば「かまし」なのか「つっぱり」なのかを考えるのが良いでしょう。

※「かまし」についてはWINTICKET EXデータ解説「かまし」編をご参照ください。
※「つっぱり」についてはWINTICKET EXデータ解説「つっぱり」編をご参照ください。

⑦の選手が「かまし」先行型だとします。①の選手が「捲り」タイプだとすれば、⑦が来たときにあっさりと引いて捲りに構えるでしょう。しかし①が「つっぱり」先行型の場合、①が勝つか、⑦が勝つかを競走得点や勝率などのデータを参考にして予想します。結果、⑦は①の前に出切るとなったとき、次に考えるのは⑧と⑨は付いていけるのかということです。

また、「かまし」は奇襲です。400バンクで赤板2コーナーから徐々に加速をつけて、打鐘でかましに行くというのはオーソドックスな戦法なので番手も準備しているでしょう。しかし2コーナーから一気に加速して打鐘で前に出切るといった奇襲を仕掛けたときに、⑧が踏み遅れて⑦だけ単騎で出切ってしまったり。⑧は付いていったけど、⑨が踏み遅れて最後方に残されることがあります。

このような状況を「ラインを結束していた糸を千切った」ようになることから、⑦と⑧が「ちぎれる(千切れる)」、⑧と⑨が「ちぎれる(千切れる)」と言います。逆に⑦が⑧を「ちぎる(千切る)」、⑦と⑧が⑨を「ちぎる(千切る)」とも言います。

⑦が⑧をちぎらなければ、⑦と⑧が⑨をちぎらなければ、ライン決着を本線で考えられるでしょう。しかし⑦が⑧をちぎる可能性があれば、⑦と⑧が⑨をちぎる可能性があれば、2着3着は別線の選手を考えなければなりません。

「ちぎる」可能性が低い選手の特徴

出走表

このような選手は積極的にSを獲りにいくのに捲りの決まり手がほとんどないことから、「つっぱり」先行型といえます。前に構えて後ろから「かまし」に来る選手に合わせて突っ張っていくため、一気に加速するということがありません。突っ張りきった後も自分のペースで走りますから、無理に踏むこともない。それならば番手の選手は脚を使いませんし、むしろ差せる可能性が高まるくらい。余程の実力差がない限り、「ちぎる」ことはないでしょう。

「ちぎる」可能性が高い選手の特徴

出走表

このような選手はSを取らずに後ろで構えて「かまし」て行くタイプと言えます。「かまし」が好きな選手は状況によっては「捲り」に構えることも多いです。ダッシュが持ち味のスプリンタータイプに多く、一気にスピードを上げられるため、かましたり捲ったりするレース展開を好みます。

「かまし」は奇襲ですから、相手を騙すことで、味方も騙されてしまうことがある。そうなると「ちぎる」可能性は高まってしまうのです。

チャレンジに乗ってくる強い新人は得てして「ちぎる」イメージがあるかもしれません。昔は新人がかましたり捲ったりすると「若い頃からそんな走り方をするな!」と師匠に殴られたという話があります。他と力の差がある選手がかましたり、捲ったりするのは楽ですから、新人の頃は前で正攻法に構えて、つっぱり徹底先行して競輪を覚えながら脚力を付けるように言われたとのことです。

しかし今はあまり強く言うとパワハラになってしまうというのもあってか、新人はわりと自由に走ります。番手が千切れることもお構いなしにとまでは言いませんが、「自分が勝ち、ファンの期待に応えること」を第一に、常に全力で飛ばして番手を「ちぎる」選手もいます。ただ、その一方でつっぱり先行で勝ちきっていく、昔ながらの泥臭い新人も少なからずいます。

上に挙げたようなデータを見て、レースを見ていれば「ちぎる」選手かどうかはわかるはずです。どちらが好みかは人それぞれ。いろんな選手がいるからこそ、競輪の予想の厚みが出てきて面白くなるのです。

参考:WINTICKET EXデータ徹底解説シリーズ

ウィンチケット編集部
WINTICKET(ウィンチケット)のコンテンツ編集チーム。初心者でも0からわかる記事を150本以上執筆した他、グレードレースを中心とした「WINTICKETニュース」、ABEMA 競輪・オートレースチャンネルでの番組の見どころをまとめたレポート記事の執筆を担当。

記事をシェアしよう

関連記事