競輪コラム

競輪選手の「引退を決意する瞬間」と「引退後に新たな道で活躍する選手」

競輪は鍛え抜かれた身体を使って戦うスポーツです。このように厳しいスポーツの世界では肉体的な限界を迎え、早くに引退を決意する方が少なくありません。

しかし競輪の世界は比較的引退年齢が高く、平均44歳ともいわれています。実際に2020年1月まで65歳という年齢で活躍していた『三ツ井勉』がいるほどです。

では、競輪選手はどのタイミングで引退を決意するのでしょうか。

本記事では競輪選手が引退するタイミングや理由、引退後の活躍についてご紹介します。

競輪選手の引退は大きく2つの理由で決まる!

競輪は出場する際に年齢の上限はありません。つまり肉体面の衰えがなく、実力さえあればデビューしたての若い選手と同じレースで勝負ができます。

しかし、年齢を重ねていくと体力の衰えが表れ、引退に追い込まれることもあるでしょう。

基本的に競輪選手が引退する理由には、選手自身が体力の衰えを感じての「自己判断」、実力を発揮できなくなって受ける「引退勧告」の2つがあります。

では、競輪選手が引退する理由について詳しく見ていきましょう。

競輪選手は肉体の限界を迎えたときに引退を決意

競輪選手には年齢制限がないため、40代や50代になっても現役として活躍できます。実際に60代でも現役として活躍する競輪選手がいます。

しかし加齢による肉体的な衰えは避けられません。そのようなときに、競輪選手は「実力を発揮できない」と考え、引退を決意します。

競輪界では成績が悪いと引退勧告(クビ)になる場合がある

競輪の世界では自己判断による引退だけではなく、成績によっては「引退勧告」を告げられてしまうこともあります。これは「代謝制度」と呼ばれるものです。

競輪選手は勝負の世界で活躍しているため、「勝つこと」が常に課せられ、毎回よい成績を残すことが求められます。そのため、レースの成績が悪いと代謝制度によって、引退勧告を告げられてしまうことがあるのです。

代謝制度は単純に弱い選手を切るという目的ではなく、プロのアスリートとして活躍できる選手をふるいにかけ、競輪選手全体のレベルを底上げする役割も担っています。

代謝制度の対象は、成績下位から男子30名、女子3名の選手が対象となり登録抹消。また、男子は3期連続で競走得点が70点を下回ってしまった場合、女子は2期連続で競走得点が47点を下回った場合も引退勧告の対象になります。

<競輪レース>

厳しい世界で走る競輪選手は引退を常に意識しなくてはいけない

競輪選手は勝負の世界で戦っているため、デビューしたばかりの選手でも実力が低いと引退に追い込まれる可能性があります。競輪選手養成所を卒業した直後であっても、思ったように成績を残せないと引退勧告を告げられてしまうこともあるのです。

また、競輪選手がレースで実力を発揮するためには、「脚」の状態がカギとなります。靭帯損傷や、落車による怪我が原因で引退を余儀なくされる競輪選手も多くいるのです。

このように、競輪は新人選手・ベテラン選手関係なく全選手が常に引退と隣合わせの厳しい世界なのです。

競輪選手は引退したらどうする?

プロの世界で活躍した競輪選手であっても、引退後も引き続き競輪に関係する職に就けるとは限りません。

以下では、競輪選手が引退したときにどのような職に就くのか、また違う世界で働くにはどのような仕事があるのかをご紹介します。

競輪選手の引退年齢は平均44歳!

競輪選手が引退する年齢は、平均で44歳といわれています。鍛え抜かれた肉体を使うスポーツ選手のなかでは、圧倒的に高い引退年齢です。

この年齢の高さは、レースは単純に体力勝負ではないことが考えられます。競輪はラインと呼ばれる編成や、戦略なども勝敗を分けるカギとなるので、ベテラン選手は経験による技術で体力をカバーできるのです。

ただし極端な体力の衰えがあれば、40代にならずとも若い時期に引退を決意してしまう方もなかにはいます。

また20年以上選手として活躍していれば、約1500万円~2000万円の退職金がもらえる制度もあるため、選手は最低でも20年間は活躍できるように日々レースで勝つことを目標にトレーニングを取り組んでいます。

引退した競輪選手は競輪場の職員に再就職

引退した競輪選手のなかには、慣れ親しんだ競輪場の職員として再就職する方もいます。施設運営スタッフ・警備員・売店スタッフ・車検整備スタッフなど職種は多種多様です。競輪場によっては、初心者解説コーナーなどに元競輪選手を配置し、競輪のイロハを教えてくれるようなところもあります。

やはり、競輪一筋の人生だった選手たちは、何かしら競輪に関わる仕事がしたいという気持ちが強く、競輪場などで働く方が多いのかもしれません。

しかし、競輪場のスタッフとして働くと、現役時代よりも収入が極端に下がってしまいます。男子競輪選手の平均年収は約1,200万円、女子競輪選手の平均年収は約600万円といわれており、収入の減少で生活苦になってしまい、競輪の世界を離れて一般的なサラリーマンとして働く方も少なくありません。

また退職金を元手に和食店、スポーツジム、自転車屋などの自営業をはじめる方もおり、引退後も多くの選択肢があります。

引退後に競輪の解説者になるのは難しい!

現役で活躍していた選手は競輪について詳しく、解説にも向いていそうと思われがちですが、すべての競輪選手が解説者に向いているとは限りません。

たしかに元競輪選手は、競輪に関する知識が豊富で競輪に精通していますが、解説者は「おもしろく」「わかりやすく」解説する必要があるため、そのようなスキルがなければ競輪の解説者は務まらないでしょう。

競輪の世界を引退した選手は数多くいますが、実際に解説者として活躍している元競輪選手はごくわずか。日本のスポーツ界ではじめて1億円プレイヤーとなったレジェンド『中野浩一』や、生涯獲得賞金額16億8,866万円を獲得した『吉岡稔真』、現役当時天才的なレース展開を繰り広げ多くのファンをわかせた『井上茂徳』など、あまり多くはありません。

それだけ競輪の解説者は、知識だけではなくスキルも重要になる難しい職業といえるでしょう。

競輪選手の引退はすべて自分の結果で決まる厳しい世界

競輪選手は「自己判断」か「引退勧告」によって引退が決まりますが、どちらにしても「レースで勝って成績を残せるか」が引退を左右するポイントです。

ただし、競輪は体力だけがレースの勝敗をわけるわけではありません。レース中の位置取り、展開、戦術などがレースの勝敗を左右するため、年齢を重ねた選手であっても技術面でカバーして若手の選手と張り合うこともできます。そのため競輪は、ほかのスポーツと比較しても引退年齢が高く、40代・50代になっても現役で戦う姿を見せてくれるのです。

選手たちは成績が悪いと代謝制度による引退勧告を受けることもあるので、常に「勝つこと」を意識して日々レースに挑みます。年齢を重ねるにつれて体力面だけではなく、「若手選手には負けない!」という精神的な気持ちも重要になってくるでしょう。

参考 : WINTICKET 競輪勉強シリーズ

ウィンチケット編集部
WINTICKET(ウィンチケット)のコンテンツ編集チーム。初心者でも0からわかる記事を150本以上執筆した他、グレードレースを中心とした「WINTICKETニュース」、ABEMA 競輪・オートレースチャンネルでの番組の見どころをまとめたレポート記事の執筆を担当。

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