競輪コラム

競輪選手養成所に入校して「地獄のような生活を乗り超えた」競輪選手の生き方

競輪場で白熱したレースを見せる競輪選手。実力次第では年収1億円を超えることもある夢のような職業です。

しかし、多くのファンの前で激しい戦いを繰り広げる競輪選手になるためには、日本競輪選手養成所に入校して『競輪選手資格検定』に合格しなければいけません。競輪養成所に入校後、競輪選手はプロのスポーツ選手として活躍するために、厳しい鍛錬を積み、競輪選手として成長していきます。

そこで本記事では、競輪選手として登竜門となる競輪選手養成所の生活やルールについてご紹介します。

競輪選手養成所の門を叩いた日から始まる競輪人生

競輪の世界で活躍するには、まず競輪選手養成所の入所を目指していきます。最終的に国家試験でもある『競輪選手資格検定』の取得を目指しますが、競輪選手養成所は誰でも入所できるわけではありません。

難しい入所試験に合格して入校できてから、ようやく競輪選手養成所のなかで競輪選手になるためのトレーニングが始まります。

こちらでは、競輪選手養成所の入所試験の内容や、難易度についてご紹介します。

競輪選手養成所の入所試験とは

競輪選手養成所に入所するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 日本に居住していること
  • 入所試験を受ける年の4月1日現在、満17歳以上であること

以下の条件に該当しないこと

  • 競輪選手として登録されたことがない者
  • 禁錮刑以上の刑に処された者
  • 自転車競技法をはじめとする、公営競技の法律の規定に違反して、罰金以上の刑に処された者
  • 成年被後見人、被保佐人又は破産者で復権を得ない者
  • 反社会的勢力との関係が疑われる者
  • 日本競輪選手養成所に在籍中、懲戒により対処を命じられた者
  • 規定により明らかに試験に合格しないと思われる者
  • 初回受験の日から8年が経過した者
  • 2019年度以降に5回受験した者。
  • タトゥー、入れ墨、アートメイクなどがある者。
  • そのほか上記に準ずる事実がある者。

これらの条件を満たして出願し、書類選考が通れば競輪選手養成所の第1次試験が受けられます。第1次試験は、自転車競技経験者が対象となる『技能試験』、自転車競技未経験者が対象となる『適性試験』があります。

『技能試験』はスタンディングスタートで、男子は小倉競輪場で1,000mのタイムトライアル、女子は競輪選手養成所で500mのタイムトライアル。また『適性試験』は自転車競技未経験者が対象のため、垂直跳び・背筋力の測定をおこない、競輪選手として適した身体能力があるのかを見極めます。

第1次試験に合格後は、第2次試験に移ります。第2次試験では『適性試験』を受けた方のみ、固定式自転車を使って最大回転数の測定や、男子は45秒、女子は30秒の脚力を計測します。

またJKAが認めた自転車競技などの大会において優秀な成績を残した方は、一般入試より難易度の低い特別選抜入試を受験できます。

超難関!入所試験の難易度は非常に高い

競輪選手養成所では、男子70名、女子20名程度の合計90名程度を募集しています。しかし、募集人数に対して直近の応募人数は約390名(男子)。

男子の倍率だけを見ても約5.5倍もの倍率があるので、競輪選手養成所の入所試験の難易度は非常に高いことがわかるでしょう。

条件を満たせば誰でも願書は提出できますが、競輪選手はプロのスポーツ選手のため、大前提として体力に自信がある男女しかいません。実際に自転車競技に関わっていた方だけではなく、元プロ野球選手、アイスホッケー、キックボクシングなど、別の世界でスポーツ選手として活躍していた方ばかりです。

<競輪レースの様子>

日本競輪選手養成所の地獄のような寮生活がスタート

日本競輪選手養成所の試験に合格後は、厳しいルールを守りながら、競輪選手として活躍するために寮生活を送り、過酷なトレーニングを日々おこなっていきます。その過酷な環境は、アメリカ海軍の『ネイビー・シールズ』に匹敵する厳しい世界ともいわれています。

それでは、日本競輪選手養成所の生活がどれほど厳しいのか見ていきましょう。

日本競輪選手養成所の学習期間とルール

競輪選手養成所は、基本的に5月からはじまり、翌年の3月までの10か月間おこなわれます。寮生活中は食費やウェア、施設使用料などを自己負担しなくはいけなく、約120万円もの費用がかかることも。競輪選手養成所で学習する間は、レースで使う技術面のトレーニングはもちろんですが、走行上守らなければいけない法律やルールを学びます。

また寮生活の間は厳しいルールを守って生活しなくてはいけません。

競輪選手養成所に在籍中は自宅から通えず、必ず寮で生活を送ります。さらに、原則として男女隔週日曜日の8:30から17:30以外は外出が禁止されています。

また制服の着用が義務付けられていて、構内で携帯電話やスマートフォンなどを使用した外部との連絡もできません。

競輪選手として活躍するための走行技術や知識を学ぶのも大変ですが、普段の生活でも規律を守る大変さがあります。

日本競輪選手養成所のルール違反時の罰則

競輪選手養成所に在籍中は厳しいルールが設けられています。法律に反する行為はもちろんですが、喫煙や飲酒なども禁止されています。

競輪選手養成所で定められている禁止事項は次のとおりです。

  • 飲酒
  • 喫煙
  • 暴力や窃盗
  • 無断外出や無断外泊
  • 賭けごとをする行為
  • 携帯電話やスマートフォンなどの通信可能な電子機器の持ち込みおよび使用(条件によっては使用可)
  • 教官への反抗
  • 異性間での接触、男女の規制エリアへの出入り
  • 重大な虚偽の申告
  • タトゥーや入れ墨
  • 養成所の秩序を乱す行為

これらのルールを違反した場合は、厳重注意だけではなく、最悪の場合は退所処分になることもあります。

とくにスマートフォンが発達した現代で、通信可能な電子機器の持ち込みが禁止されているので、罰則対象となってしまう選手も少なくありません。また厳しい寮生活を送る選手たちは、日々のストレス解消のためか「飲酒」や「喫煙」をしてしまう方もいるようで、退所処分の理由としては一番多くなっています。

競輪選手になるには競輪選手資格検定に合格する必要がある

競輪選手養成所で10ヵ月間の厳しい生活を送ったとしても、必ず競輪選手になれるわけではありません。

競輪選手養成所で学んだ技術や知識を活かし、国家資格の『競輪選手資格検定』に合格する必要があります。

こちらでは、競輪選手資格検定はどのようなものなのか、取得後の道のりを見ていきましょう。

過去に養成所に入校せずに競輪選手資格検定の合格者はいない

公益社団法人JKAが実施する国家資格『競輪選手資格検定』に合格することで、はじめて競輪選手としての人生が始まります。

競輪選手資格検定は競輪選手養成所に入所しなくても受験は可能ですが、過去に競輪選手養成所に入所しないで合格した選手は存在しません。つまり、いくら身体能力に自信がある方でも、競輪選手養成所の厳しい訓練を積んだ方にはおよばないということでしょう。

<新田祐大選手>

競輪選手資格検定に合格してから、厳しい人生がスタートする

競輪選手資格検定を合格し、選手として登録されたら終わりではありません。

ここから、競輪選手養成所時代とは比べものにならない厳しい世界で、勝ち抜いていく戦いが始まります。競輪選手資格検定はあくまでもスタート地点で、競輪界の頂点「S級S班」になるためには、レースで勝ち続けることが目標となるでしょう。

しかし、競輪選手資格検定を合格した選手の全員が「S級S班」になれるとは限りません。頂点を目指すためには、極限まで己の肉体を鍛え上げ、大勢のファンの前でも屈することなく走れる精神の両方が必要です。

競輪選手養成は競輪選手の登竜門

競輪選手として活躍するためには、競輪選手養成所に入所し、厳しい環境下でトレーニングを積み、国家資格の競輪選手資格を取得する必要があります。

そして競輪選手資格を取得したあとは、厳しいプロの世界が待っています。

競輪選手養成所の厳しい環境に耐えてきたのは一人だけではなく、出走する選手全員が同じ環境を経験しています。そのため、ほかの選手よりも活躍して競輪界のトップを目指すためには、並外れた努力が必要になってくるでしょう。

そのような選手の努力を知ると、また違った観点からレースを楽しめるかもしれません。

参考 : WINTICKET 競輪勉強シリーズ

ウィンチケット編集部
WINTICKET(ウィンチケット)のコンテンツ編集チーム。初心者でも0からわかる記事を150本以上執筆した他、グレードレースを中心とした「WINTICKETニュース」、ABEMA 競輪・オートレースチャンネルでの番組の見どころをまとめたレポート記事の執筆を担当。

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