競輪コラム

ガールズグランプリとは?選考基準や歴史を徹底解説!

競輪界に「HERO」がいるならば当然、「HEROINE」もいる。

競輪の全登録選手2,404名中、ガールズケイリンの選手は168名(5月1日現在)。年末に彼女たちの頂点に立つ年間「女王」を決める戦いが行われる。

それが『ガールズグランプリ』である。

かつて行われていた「女子競輪」。1949年(昭和24年)に始まり、15年後の1964年(昭和39年)には幕を閉じてしまったが、21世紀に入ると復活へ向けた動きが強まる。

2008年(平成20年)、全国の競輪場で実力の高い女子アマチュア自転車競技選手を集めたエキシビションレース開始。2012年(平成24年)のロンドン夏季五輪で「女子ケイリン」が正式種目になることが決まると「世界で活躍できる選手の強化」を掲げ、自転車競技の国際ルールに則った判定基準で行う女子選手だけのレースを開催することとなり、女子競輪復活というよりも新たな競技として『ガールズケイリン』が始まったのである。

男子選手が争う競輪に特別競走があるように、ガールズケイリン選手にも特別レースを設けようというのは当然の流れ。年に3回開催される単発レースの『ガールズケイリンコレクション』。3月開催は平均競走得点上位者の争い。5月開催は1月に行われるトライアルレース上位者による戦い。8月開催はファン投票上位7名による決戦である。4月に開催される『ガールズフレッシュクイーン』はデビュー2年未満の新人選手が次世代のスター選手を目指す単発勝負だ。7月の『ガールズケイリンフェスティバル』では優勝回数上位選手による3日間のトーナメント戦が行われる。

これら5つの大会とは別にもうひとつ。年間獲得賞金上位者とトライアルレース優勝者によって争われ、その年の「女王」を決するガールズケイリン最高峰のレースがある。

それが『ガールズグランプリ』である。

毎年12月28日から3日間の日程で開催される年末最後の競輪開催「グランプリシリーズ」の初日、12月28日の最終レースで開催される『ガールズグランプリ』。第10回目となる今年も12月28日(火)に行われる。

第1回の優勝賞金は500万円。第2回は700万円となり、第3回以降は副賞込みで1,000万円に引き上げられた。第8回、第9回は副賞込みで1,005万円に加え、レクサスUX250h version L(新車価格約520万円)も贈呈されている。合わせて1,500万円以上の金品を勝ち取れるのだ。第4回からは表彰式で特製ティアラも戴冠され、文字通り「女王」となれるのだから、すべてのガールズケイリン選手が出場して優勝したいと切望していることだろう。

出場資格は当年1月から11月下旬に行われるガールズグランプリトライアルレース最終日までの選考期間に40回以上の出走回数があること。その上で……

①東京オリンピック自転車競技トラック個人種目メダル獲得者

これは残念ながら該当者は出なかった。

②ガールズグランプリ2021トライアルレース「トパーズ」「アメジスト」の各優勝者

『競輪祭』と同時開催されるトーナメント式のトライアルレース2つ、グループA「トパーズ」とグループB「アメジスト」の優勝者計2名は優先的に出場権が与えられる。

③運営調整部会が特に認めた選手

自転車競技の国際大会で活躍した選手などがこの枠で選ばれる。これについては選手選考以前に決定されることになっている。

④選考用賞金獲得額上位者

①から③以外は前述した選考期間内で獲得した賞金額上位者から順次選ばれていく。正選手7名、補欠選手1名。選ばれた選手たちはどういった戦いをくり広げてきたのか。過去5年のレースを振り返ってみよう。

2016年(平成28年)、舞台は立川競輪場。号砲でいつも通りにSを取りに行った梶田舞を制して正攻法に構えたのは石井寛子。①石井、⑥梶田、④児玉碧衣、②山原さくら、③尾崎睦、⑤奥井迪、⑦高木真備の並びとなった。打鐘前で最初に動いたのは山原。その外から奥井が出て行き、尾崎、梶田が続く。最終バックで内に潜り込む山原、外から巻き返そうとする児玉。そこに合わせて梶田が出て行く。直線では内に奥井、中に梶田、外に児玉の3車の戦いとなり、最後に伸び切った梶田が2年ぶり2度目の戴冠となった。2着奥井で3着児玉の三連単⑥-⑤-④、4,460円の中穴決着。

2017年(平成29年)、舞台は平塚競輪場。号砲一発、一斉に踏み出す選手の頭に立ったのは梶田舞であった。②梶田、⑦石井寛子、③高木真備、①尾崎睦、④奥井迪、⑥長澤彩、⑤児玉碧衣で周回。打鐘前で動いた奥井に合わせる石井。石井が前で直線に入るが、ホームで奥井が主導権を取りに行く。そこに付いていった長澤のインで粘って奥井を後ろを取りきる石井。バックで高木が上がってくるも前までは届かず、奥井-石井の並びでゴールへ向かう。逃げる奥井に外へ出して追う石井。踏み直す奥井、もがく石井。奥井か、石井か。ハンドル投げの末、僅差で差した石井寛子が初の女王に輝いた。2着奥井の3着梶田で三連単は⑦-④-②、6万2,330円の大穴配当。

2018年(平成30年)、舞台は静岡競輪場。スタートを決めたのは石井寛子で、高木真備が2番手を確保した。鈴木美教が児玉碧衣の外をしばらく並走したが、最終的には③石井寛子、⑤高木、②梅川風子、⑥鈴木、①児玉、④石井貴子、⑦尾崎睦の並びで周回。打鐘で誰も仕掛けず、最終ホームでもけん制し合い、最初に高木が踏み出したのは1角。一気に飛び出しバックで後続を引き離すも、後ろから捲ってきた児玉に最終コーナーで追いつかれて勝負あり。年間勝率首位で1番人気を背負っていた児玉が初の女王となったのである。終始、児玉を追った石井貴子が2着、3着に高木が残って三連単①-④-⑤、5,100円。

2019年(令和元年)、舞台は立川競輪場。奥井迪が大外からSを取り、石井寛子が後に続く。⑦奥井、④石井寛子、①梅川風子、②小林優香、⑥佐藤水菜、③児玉碧衣、⑤石井貴子の並びで周回。打鐘前から車間を切って後方の様子をうかがう梅川。結局そのまま誰も動かず最終ホームへ。2角から踏んだのは小林、合わせる梅川、外から児玉と4車殺到して3角へ突っ込んだところで梅川と石井寛子が接触転倒。それを横目に2センターで抜け出した児玉が直線でさらに踏み込み、姉弟子の小林を引き離しての圧勝劇で史上初のガールズグランプリ2連覇を果たした。最後、諦め気味になっていた小林を差した石井貴子が2着、小林が3着となり、三連単は③-⑤-②で4,110円の13番人気。

2020年(令和2年)、舞台は平塚競輪場。号砲と同時に1人飛び出したのはメンバーの中でS回数最多の石井寛子。高木真備、梅川風子と続くが、その梅川の後ろを奪い合うかのごとく、目まぐるしく位置取りが変わる。結局、⑥石井寛子、③高木、⑤梅川、④石井貴子、①児玉碧衣、⑦鈴木美教、②佐藤水菜の並びで落ち着いたのは赤板ホームであった。打鐘では隊列変わらず、4コーナーで行ったのは児玉。付いていく鈴木。外から佐藤、内から合わせる高木と最終ホームで一気にレースが動き出す。先頭へ出たのは地元の佐藤。そこに高木が付けた外を児玉が踏むとかかりよく、3コーナーで前へ。あとは誰も寄せ付けない、女王の走りで2年連続の圧勝劇。ガッツポーズでガールズグランプリ3連覇という金字塔を打ち立てた。児玉になんとか食らいつこうとした梅川が2着、3着高木で三連単①-⑤-③は1,330円。2番人気の決着でファンの期待に応えたのである。

さて、今年はどうなるだろうか。ガールズグランプリは新人選手でも制覇する可能性がある。例えば114期の佐藤水菜は新人ながらトライアルレース「アメジスト」の決勝で2着という惜しい結果を残している。優勝していればデビュー半年でグランプリ出場となり、女王になるのも夢じゃなかったわけだ。

新人からベテランまで誰でも「HEROINE」になれる可能性がある大会であり、若手でも力さえあれば「女王」からティアラを奪い取れる年末のビッグレース。

それが『ガールズグランプリ』である。

ウィンチケット編集部
WINTICKET(ウィンチケット)のコンテンツ編集チーム。初心者でも0からわかる記事を150本以上執筆した他、グレードレースを中心とした「WINTICKETニュース」、ABEMA 競輪・オートレースチャンネルでの番組の見どころをまとめたレポート記事の執筆を担当。

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