競輪コラム

競輪選手になるには?厳しい試験や生活環境についてくわしく解説

日々、厳しいトレーニングを重ねながら身体を鍛え、時速70kmのなかで1着を取るために熱いレースで競い合う競輪選手たち。
そんな競輪選手ですが、どうすれば競輪選手になれるのか知っていますか?

近年では、自転車ブームの影響から、競輪選手を目指そうとする若者が非常に多くなっており、公営競技のなかでも高額な賞金を手にするのを夢みる人も少なくありません。

そこで本記事では、競輪選手になるまでの過酷な道のりにあわせて、競輪選手になるまでのこまかい生活などをご紹介します。

新田祐大選手 写真

競輪選手になるには?

大前提として競輪選手になるには、国家試験である「競輪選手資格検定」への合格が絶対条件になります。

競輪選手資格検定とは、地方公共団体が開催する競輪に出場する選手の資格検定です。
公営競技でもある競輪でレースに参加できる選手は、自転車競技法第6条で定まった、公益財団法人 JKA(競輪振興法人)に登録された者でなくてはなりません。

そのため、JKAでは競輪選手としての技能、学力、適性などがあるのかを判断するために競輪選手資格検定を通過したものと定まっています。

また、国家試験の競輪選手資格検定は、誰でも受験できますが、普通に受験して受かるのは不可能に近く、ほとんどの方が日本競輪選手養成所という競輪学校に入校して試験の合格を目指します。

過去に競輪選手になった方も含めても、日本競輪選手養成所に入らずに合格した方は存在していません。

さらに、その競輪学校にも入学試験は存在します。厳しい競輪学校の入学試験に合格したら、もっと厳しい競輪学校での寮生活を送りながら、競輪選手資格検定の合格を目指して日々トレーニングや学習をおこなうのです。

最終的に競輪選手資格検定に合格すれば、晴れて競輪選手になることができます。

これが競輪選手になるための流れです。

しかし、上記で説明した競輪学校では想像をはるかに超える厳しい生活が待っています。そこで、さらにくわしく競輪学校の生活などをまとめて解説します。

日本競輪学校(日本競輪選手養成所)とは

現在では、日本競輪学校から名前が変わり、日本競輪選手養成所となっております。

日本競輪選手養成所の所在地は、静岡県伊豆市(旧修善寺町)に位置し、日本における競輪の選手を養成するため施設になっており、全国でこの一カ所だけです。
そして日本競輪選手養成所に入所するには、試験を受けて合格する必要があります。

競輪選手を目指す方は、日本競輪選手養成所に入所して選手になるために、肉体的トレーニング、精神的トレーニングを中心に、競輪選手としての技術や競技ルールなどを学びます。

日本競輪選手養成所は年に1回入所試験がおこなわれ、受験する年の4月1日時点で満17歳以上の方なら誰でも受験が可能です。ちなみに上限は決まっていませんので、若い方だけが入所できるわけでもありません。

一次試験

一次試験は、技能試験と適性試験がおこなわれますが、適性試験は自転車競技が未経験の方が対象となっており、筋力測定や身体の柔軟性、背筋力などを測定して、選手としてふさわしい能力をもっているのかを判断します。

技能試験は、自転車競技の経験者が対象で男子は1,000mの走行時間、女子は500mの走行時間をそれぞれ計測した基準になります。

男子は1,000mの走行テストのタイムが1分10秒以下で、女子は40秒以下と噂されていますが、正式な合格基準のタイムは公表されていません。

ちなみに、119期生の平均タイムは男子が1分09秒83、女子が38秒99となっていました。

二次試験

二次試験は身体検査、人物考査、実技試験などがおこなわれます。

身体検査は、養成所が定める「身体検査合格基準」に照らし合わせ、身体に入れ墨やタトゥーなどがないかなどのチェックもおこなっているようです。

また、人物考査では、口頭面接、適性検査、作文などの筆記試験に加え、高校卒業程度の基礎学力である国語力、数学力などが必要となります。

実技試験では、自転車競技未経験の方が対象で、競輪用の自転車を固定させた状態で、6秒間全力パワー測定と男子45秒、女子30秒の走行時の平均パワー測定が測定されます。

これが基本的な入学試験の内容です。

しかし、上記以外にも特別選抜入試制度というものが存在しています。特別選抜入試制度とはJKAが認めた世界規模の大会で優秀な成績を収めた方が、一般入試とは違って優遇されて入る方法です。

簡単に言うと、特待生です。この場合は、願書の受付期間の延長や入学試験の内容が変更になる待遇を受けることが可能です。

そして最後に日本競輪選手養成所の難易度ですが、直近のデータを確認すると、最終合格率は男子が20.5%、女子の最終合格率は52.6%となってました。

男子は受験者も多く370人に対して合格者は70人なので難易度は高く、狭き門の試験といえるでしょう。一方で女子の場合は、受験者が39人に対して、合格者が20人なので割合だけを見ると半数は合格できるようです。

国家試験の「競輪選手資格検定」とは

日本競輪選手養成所に入所して約10ヶ月の寮生活を終え、卒業試験を合格すると競輪選手資格検定を受検します。

競輪選手資格検定に合格して資格を手に入れることで、晴れてJKAの競輪選手として登録できます。

競輪選手資格検定の内容はあまり公にされておらず、日本競輪選手養成所内で学んだ内容や資格試験のために積んだトレーニングが試される内容が多く含まれているようです。

競輪選手資格検定の合格率は、日本競輪選手養成所へ入所し卒業検定を通過できる選手に限定されるため、検定試験の合格率は日本競輪選手養成所の入学試験と同等だと推測できます。

日本競輪選手養成所(競輪学校)の生活

日本競輪選手養成所に入所した方は毎年5月から翌年の3月までの10ヶ月間を養成所内で寮生活をおこないます。

その養成所の生活は、非常に厳しいと有名です。競輪選手になるために日本競輪選手養成所に入所する方は、選手としての技術や教養を学ぶだけでなく、人間としても立派になるように規則正しい生活を送ります。

そこで、選手になるために必要不可欠な道である、日本競輪選手養成所の生活をご紹介します。

アメリカ海軍「ネイビーシールズ」に匹敵する厳しい訓練

日本競輪選手養成所はアメリカの海軍でもある「ネイビーシールズ」に匹敵するくらい厳しい生活といわれているほど、規律の厳しい世界になっています。

その理由は、競輪選手になるために必要な技術、体力、精神力だけでなく、一人の人間として恥じないような人を育てるという養成所の信念があるからです。

毎日、6時30分に起床し、6時45分から通称「錬成」と呼ばれるストレッチをおこなった後、清掃し、朝食をとります。

9時05分から、1限目の授業がスタート。午前中は国語や社会を学ぶほかに、自転車競技のルール、競輪の知識に授業をおこないます。

昼食後、13時からは競走訓練が始まり、17時まで実施します。その後は、夕食、入浴、自習時間などを過ごし、22時には完全消灯です。

原則、日曜日、祝日以外はこの生活をおくり、日曜日だけは外出が認められますが、ほとんどの生徒は自主トレーニングをして過ごすようです。

日本競輪選手養成所に入所すると、外部とは一切連絡が取れないため、常に自分を見つめながらトレーニングに明け暮れる日々になります。

また施設内は、男子、女子で共同生活になりますがフロアが異なるため、接点はなく、一緒に食事する時間もありません。

もし、異性のフロアに侵入した場合は、ペナルティが課せられます。

厳しい「規律・規則・トレーニング」で人間力を磨く

日本競輪選手養成所では、朝の起床から点呼だけでも厳しいルールが存在し、少しでも遅れたり、整理整頓ができていないとペナルティを課せられたり、授業を受けさせてもれない場合もあります。

毎日、厳しい規則のなかで生活することで、人間力を磨き、どこにいっても恥じない力を身につけることを目的としています。

そのため、常に厳しい規律を守り、トレーニングも教養に関しても全力で臨む姿勢が求められるので、環境に合わない生徒は自主退学してしまう場合も少なくありません。

日本競輪選手養成所の禁止されているルールを守る

日本競輪選手養成所では禁止されているルールが多くあります。

禁止されているルールを守らないと、最悪の場合は退学処分の対象です。

まずは、スマートフォンなどの通信可能電子機器の持ち込み禁止。日本競輪選手養成所に入所すると、通常時は外部との連絡は一切とれません。

しかし、日曜日の外出時、帰省時、もしくは特別に許可された場合は可能です。

次に禁止されているのは、飲酒と喫煙になります。肉体や精神を鍛え抜く選手たちは、あまり縁がないように感じますが、退学処分される理由で一番多いのは喫煙だそうです。

そのほかには、無断外出、無断外泊、賭け事、教官への反抗行為、異性間での接触などが含まれています。

この時代に、スマートフォンすら利用できないのは、家庭がある方には非常に大変かと思いますが、競輪選手になるためには、強い精神力が必要ということでしょう。

競輪選手になるには厳しい生活を乗り越えなければいけない!

競輪選手になるには非常に過酷な試練が待っています。競輪選手になるには、まず日本競輪選手養成所の入学試験に合格し、その後10ヶ月の軍隊に匹敵する生活を乗り越えなくてはいけません。
その後、国家試験である競輪選手資格検定を合格し、はじめて競輪選手として登録されるのです。

しかし、競輪選手が大変なのは、ここからです。
競輪選手として生活するには、賞金を稼ぎ、活躍しなくてはいけません。どんなに勝てなくても、養成所のように教えてくれる教官はおらず、必死でトレーニングを重ねる必要があります。

毎日勝負の世界で働く競輪選手は、体力も精神も強く、レースで勝つための戦略を考えられる努力が引退するまで求められるでしょう。

ぜひ、競輪選手を目指す方は、その点も踏まえて頑張ってください!

参考.1 : WINTICKET 競輪勉強シリーズ

参考.2 : WINTICKET 初心者向けコンテンツシリーズ

ウィンチケット編集部
WINTICKET(ウィンチケット)のコンテンツ編集チーム。初心者でも0からわかる記事を150本以上執筆した他、グレードレースを中心とした「WINTICKETニュース」、ABEMA 競輪・オートレースチャンネルでの番組の見どころをまとめたレポート記事の執筆を担当。

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